【FRIDAY MUSIC】馨しい音楽(MARI)
Jazzという音楽はあまりに専門家の多い敷居の高い、「大人の世界」で、
半可通ですらない素人の自分が好きな曲を語るには、
何か資格がなければいけないんじゃないか、と思ってしまう。
しかし、好きな音楽というものは個人の記憶に結びついているもので、
とても私的なものだから、あまりにスタンダードだとか、
この時のこの演奏や録音がどうだとか、そんなうん蓄からは自由でいいのだ
(なのに少し気にしてしまう)。という言い訳はさておき。
お気に入りのジャズの名曲の多くは、味覚や嗅覚の記憶と結びついている。
なんだか、とても美味しそうだったり、いい香りがするのである。
肉料理を食べたくなったり、コーヒーを飲みたくなったり、
お香から揺らぎながらゆっくり漂う煙を眺めたくなったり。
ジャズって、どうしてこんなにも感覚を刺激するんだろう。
マイルス・デイビスとキャノンボール・アダレイのこの曲を聞くと思い出されるのは、
肌寒い夜に乗る車の座席に染み付いたタバコの匂いや、
冬のオフィス街、昔バイトしていたコーヒー屋の豆の香り。
様々な場面でこの曲を聴いた記憶。
それからマイルス・デイビスのトランペットの哀愁感漂う音色が
まるでお香の煙のように細く長く空間を漂う。
ああ、私ってなんだか(田舎から来た)都会人だわ。と自分にうっとり酔える。
ちなみに、酔っている最中は人に見せられないほど上の空な顔をしているため、
必ず一人で聴きたい。
MARI
TABLE THINGS
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