【Friday music】春に聞きたい音楽(Mari)
古代エジプトの衣装に身を包んだ、怪しげで崇高な佇まいのミュージシャン。
サン・ラは私に、「アフロ・フューチャリズム」という、全くもって未知の世界を教えてくれた。
1930年代末の、とある夜に空から指す光に導かれ、宇宙船に誘拐されたハーマン・“ソニー”・ブラントは宇宙人からとある使命を授かる。「地球上の黒人を暴力、差別から守るように」と。それからソニーはサン・ラ名義で活動。そのルーツを宇宙やアフリカにあると説きながら、同じ宇宙船の「船員」たちであるアーケストラ隊員たちと音楽を通し、黒人による宇宙観を表現した。
(アフロ・フューチャリズムの起源については、こちらのビデオから参照。)
サン・ラの奇抜でありながらも高尚な、アイデンティティーを取り戻すためのアクションや言葉を、私は想像力でどうにか追体験しようとする。
とはいえ人種差別の歴史の根は私が思うよりもずっと深く、
どれほど努力しても、完全に理解できる日は来ないかもしれない。
そんなことを考えながらも、彼の音楽が呼び起こす、過去と繋がる無限の「宇宙」と
その浮遊感は、春の落ち着かないふわふわした気持ちにすっと馴染む。
「アイデンティティーの喪失」よりも些細な「所在なさ」。
それすら受け入れる広大な宇宙が、どこかに連れていってくれる。
これで夜桜とお酒があれば最高なんだけど...ここはベルリンなので夜桜は我慢。
TABLE THINGS
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